なぜ今、主体性を育むマネジメントが求められるのか?
これまでの管理型マネジメントの限界
かつての日本企業のマネジメントは、 「管理と評価」 が中心でした。上司が指示を出し、部下はそれに従い、結果を評価する。このピラミッド型の組織運営は、高度経済成長期には有効でしたが、 変化の激しい現代には適していません。
- 環境変化が激しく、 トップダウンの指示待ちでは対応できない
- 画一的な評価制度が、社員の 創造性や主体性を阻害する
- 成果主義の導入で 「個人の評価」 に重点が置かれ、組織の一体感が薄れる
🔹 参考文献:「1on1マネジメント」松丘啓司
成果主義との付き合い方
1990年代から日本企業に浸透した 「成果主義」 は、仕事の成果を数値化し、それに応じた報酬を与える仕組みです。しかし、 成果主義が行き過ぎると「短期的な結果」に囚われ、主体性を奪ってしまう ことがあります。
成果主義のデメリット
- 「目先の成果」 ばかり重視され、長期的な成長が軽視される
- 「評価のための仕事」になり、 創造性や挑戦が失われる
🔹 参考文献:「1on1マネジメント」松丘啓司
主体性が育たない組織のリスク
部下の 主体性が育たない組織 は、以下のようなリスクを抱えます。
- 生産性の低下:指示がないと動けないため、意思決定が遅れる
- イノベーションの停滞:新しいアイデアが生まれにくい
- 人材流出:「やらされ感」が強くなり、優秀な人材が離職
こうしたリスクを回避するためには、 「主体的に動く環境づくり」 が必要です。
主体性を持つチームを作るためにマネージャーがすべきこと
適材適所の考え方
主体性を引き出すには、 「適材適所」 の配置が重要です。 人にはそれぞれ得意不得意があり、 「向いていない仕事」 を与えられるとモチベーションが下がります。
🔹 参考文献:「1on1マネジメント」松丘啓司
主体性を引き出す5つのステップ
① 目的を育む - キャリアの「目的」と「目標」を分けて考える
キャリアの目標と目的は異なる ことを理解することが、主体性を引き出す第一歩です。
キャリアの目標 | キャリアの目的 |
---|---|
「私は〇〇になりたい」 | 「私は〇〇という存在でありたい」 |
例:「医者になりたい」 | 例:「病気に苦しむ人を助ける存在でいたい」 |
マネージャーは、メンバーと一緒にキャリアの目的を探求する必要があります。 具体的には、以下のステップを踏みましょう。
- 過去を振り返る:「どんな時に心が動いたか?」を問いかける
- 「正解」を求めない:「とりあえずのVer1.0」を作り、アップデートする
実践例:価値観を引き出す質問
- 「仕事で楽しいと感じる瞬間は?」
- 「どんな時に達成感を感じる?」
- 「あなたにとって、理想のリーダー像は?」
🔹 参考文献:「なぜ部下は不安で不満で無関心なのか」片岡裕司/山中健司
② 持ち味を活かす - 弱みの裏側に強みがある
「持ち味」とは、その人にとって 「苦もなく、自然にできる考え方や行動パターン」 知識や技術などみにつけることができるものとは違い、その人が本来持っている特徴のことです。
強みを発見する方法:「弱みの裏返し」
例えば、 「慎重すぎる」 という性格は 「細かい部分まで気を配れる」 という強みにもなります。
一見ネガティブな特徴 | 強みとしての解釈 |
---|---|
神経質 | 注意力が高い |
マイペース | 自分のペースを大事にできる |
優柔不断 | 周囲の意見をよく聞く |
実践例:部下の強みを見つけるワーク
- 「自分の短所を書き出してみる」
- 「それを強みに変換する」
🔹 参考文献:「なぜ部下は不安で不満で無関心なのか」片岡裕司/山中健司
③ 内面化動機を引き出す - 仕事の意味を再定義する
外部から与えられた仕事に対して、 自分の価値観や持ち味を重ねる ことで、仕事に意味を見出し、モチベーションが高まります。
実践例:「この仕事の意味は?」と問いかける
- 「なぜこの仕事をするのか?」 を一緒に考える
- 「この仕事を通じて、自分は何を得られるか?」 を整理する
🔹 参考文献:「なぜ部下は不安で不満で無関心なのか」片岡裕司/山中健司
④ 多様な視点から可能性を広げる - 1on1の活用法
なぜ1on1が必要なのか?
ピープルマネジメントにおいて、 メンバーと定期的に対話をすることが不可欠 です。その代表的な手法が 1on1ミーティング です。
1on1のメリット
- メンバーの考えを深く理解できる
- 個々の強みを活かす方法を考えられる
- 主体性を引き出し、モチベーション向上につながる
🔹 参考文献:「1on1マネジメント」松丘啓司
意識すべき「5つの会話」
ジム・クリフトンの著書『ザ・マネジャー』では、 部下のパフォーマンス向上には5つの会話が重要 であると述べられています。
職務の明確化と人間関係の構築(最初に行う)
- 「期待されている役割」を明確にする
- 仕事における価値観や目的を話し合う
クィックコネクト(短時間のカジュアルな会話)
- チャットや挨拶など、日常的な関わりを増やす
チェックイン(成功と障害の振り返り)
- 最近の仕事の進捗を確認し、障害があればサポートする
育成型コーチング(キャリアの方向性を示す)
- 長期的な視点で、成長のためのアドバイスを行う
進捗レビュー(パフォーマンス評価)
- 年2回(1〜3時間)ほど実施し、マネージャーが毎日、毎週、毎月行っているコーチングの会話と一環していることを行う
実践例:効果的な1on1の進め方
✅ 「最近の仕事で、一番やりがいを感じたことは?」
✅ 「どんな仕事をしていると、時間を忘れる?」
✅ 「今後、どんなスキルを伸ばしたい?」
🔹 参考文献:「ザ・マネジャー」ジム・クリフトン/ジム・ハーター 🔹 参考文献:「1on1マネジメント」松丘啓司
④’ これからのマネージャーは「コーチ型」にシフトせよ
管理者から「支援者」へ
従来のマネージャーは「管理者」として、部下の行動を監視し、指示を出す役割が中心でした。しかし、 これからの時代は「コーチ型マネージャー」 が求められます。
旧来の管理型マネージャー | コーチ型マネージャー |
---|---|
指示・命令をする | 部下の自発的な行動を促す |
目標を一方的に設定する | 部下と一緒に目標を決める |
成果のみを評価する | 成長プロセスを重視する |
🔹 参考文献:「1on1マネジメント」松丘啓司
実践例:部下との関係を深めるクィックコネクト
❌ NG:「最近どう?」(漠然とした質問)
✅ OK:「最近、やっていて楽しい仕事は?」(具体的な質問)
ちょっとした工夫で、部下のやる気や主体性を引き出せるのです。
⑤ 仕事のモチベーションを高める「モチベーション3.0」
「モチベーション3.0」とは?
ダニエル・ピンクの著書『モチベーション3.0』では、 「人が本当にやる気を出す要素は何か?」 について詳しく解説されています。
従来のモチベーションの考え方は、 「アメとムチ」 のような外発的な報酬(昇給・ボーナス・罰則など)によって行動を促すものでした。しかし、これでは 一時的なやる気 にしかつながらず、持続的なパフォーマンス向上は期待できません。
そこで、 「モチベーション3.0」 という新たな考え方が登場しました。これは、 「自分の意思で行動したい」 という人間の本能に基づいています。
🔹 参考文献:「モチベーション3.0」ダニエル・ピンク
「モチベーション3.0」を構成する3つの要素
自律性(Autonomy)
- 仕事の進め方や内容を 「自分で決められる環境」 があると、人はモチベーションを高く保ちやすい
- 例:フレックスタイム制やリモートワークの導入
マスタリー(熟達・Mastery)
- 人は 「何かを上達すること」 に喜びを感じる
- 例:スキルアップの機会を提供する、学習のための時間を確保する
目的(Purpose)
- 「自分の仕事が社会や誰かのためになっている」 という実感があると、やる気が増す
- 例:会社のビジョンやミッションを明確に伝える
🔹 参考文献:「モチベーション3.0」ダニエル・ピンク
実践例:「モチベーション3.0」を活かすマネジメント
✅ 「自律性を高めるために、仕事の裁量を増やす」
✅ 「メンバーが成長を実感できる仕組みを作る」
✅ 「仕事の意義を伝え、目的を共有する」
まとめ - 主体性を引き出すためのマネジメントとは?
主体性を育む5つのステップ
- 目的を育む(キャリアの「目標」と「目的」を分ける)
- 持ち味を活かす(弱みの裏返しを強みとして捉える)
- 内面化動機を引き出す(仕事の意味を自分ごとにする)
- 成長思考を育む(失敗を恐れず挑戦できる環境を作る)
- 多様な視点から可能性を広げる(1on1を活用し、対話を増やす)
これからの時代に求められるマネージャーの姿
これからのマネージャーに求められるのは、 「管理者」ではなく「コーチ」 としての役割です。
✅ メンバーを「管理する」のではなく「成長を支援する」
✅ 仕事のやり方を押し付けず、自律的に動ける環境を作る
✅ 評価基準を成果だけでなく、「学びや成長」にも置く
🔹 参考文献:「1on1マネジメント」松丘啓司
チームのコラボレーションを促進する方法
主体性のあるチームを作るには、「個人」ではなく「チーム」としての働き方を意識することが大切です。
実践例:チームの主体性を高める方法
✅ チーム単位での評価を導入する(個人主義を防ぐ)
✅ メンバー同士が学び合う「ピアコーチング」制度を作る
✅ 定期的に「振り返りミーティング」を行う
🔹 参考文献:「仕事の哲学」酒巻久
明日から実践できるポイント
- 部下との対話の時間を増やす(クィックコネクト・1on1)
- 「やるべきこと」だけでなく「なぜやるのか?」を伝える
- 仕事のやり方を部下自身に考えさせる(自律性を尊重)